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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

ぜひなく米友は、盛んに団子を食べました。

話より団子という洒落でもありますまいが、団子を食べてまぎらかしていたが、ついにこらえきれず、

「先生、いいかげんにしたらどうだ」

「そうだそうだ、日が暮れらあ」

大慌てで団子と茶代を置いて、道庵が外へ飛び出したものですから、皆々ホッとしました。

団子屋を飛び出してから間もなく、道庵先生が、

「あ、敦盛を手にかけるのを忘れた」

これはこの土地に、梅本という蕎麦の名物があったのを、つい忘れて立寄らなかった洒落でしょう。蕨の奈良茶、上尾博労新田の酒屋、浦和焼米坂の焼米、といったような名物に挨拶しながら、熊谷で、梅本の蕎麦を食べないということが心残りになるらしい。負けおしみの強い道庵は、これからまた引返して、その蕎麦屋を尋ねようといい出すかも知れない。

ところへ、上手から聞えて来たのが、

「下に――下に――かぶり物を取りましょうぞ」

これはいわずと知れた大名のお通りの先触れです。

どうも大名のお通りというやつは、道庵と米友の性に合わない。

その声を聞きつけた道庵は、顔をくもらせて、

「さあ、いけねえ、友様、面倒だから、そこらへ入ってしまおう」