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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

仮りにも一カ寺に手を入れるのに、もとより確たる証拠は握っているだろうが、夜陰こうして踏み込むのはあまりに荒っぽい。そう思って、二人の役人を見下ろすと、どうも役人らしくなくて、浪人臭い――ははあ、これは例の四国町あたりの出動かも知れないぞ、と七兵衛が胸を打ちました。

なるほど、芝の三田の四国町の薩摩屋敷の浪人あたりのやりそうなことだ。てっきり、それに違いないわい。それなら、それで、こっちにも了簡があると、七兵衛が天井裏でニッと笑いました。

下では、そんなことは知らず、いちいち婦人たちに訊問をつづけているが、いずれも恥かしがって返事がはかばかしくない。

「その方たち、夫ある身でありながら、こうして夜陰、お籠りをすることを許されて来たか」

「夫も承知のことでございます、ただ子供がほしいばっかりに……」

と泣き伏してむせぶ者もあります。

「どうだ、祈祷の利き目はあるか」

「はい……」

「聞くところによれば、住職及び徒弟どもの身持ちがよくないとのことだ、何ぞ覚えがあるか」

「…………」

「これは何に用うる品だ」

問題の役人が手に取って示したのは、畸形な裸形の男女を描いた、立川流の敷曼陀羅というのに似ている。