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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
光明には光明の使命があり、暗中には暗中の自由がある。特に弁信にあっては、明暗二つの差別が意味をなしません。
その翌日になると弁信法師は、しょぼしょぼとして檀家廻りをはじめました。
「ええ、皆様のおかげで、長々と御厄介になりましたが、昨晩、茂太郎の行方がわからなくなりましたものですから、私はこれから、それをさがしに参らねばなりません、お雪ちゃんの帰るまでは、とお約束をしたようなものですけれども、これも余儀ない事情でございますから、あとのところをよろしくお願い申しますでございます……御縁があらば、また直ぐに立帰って参りますが、御縁がないならば、これがお別れになるかも知れません」
二十九
信濃の国、白骨の温泉の宿の大きな炉辺で、しきりに猪を煮ているのは、思いがけなく繰込んで来た五人連れのお神楽師と称する一行のうちの、長老株の池田といった男と、それからもう一人は、北原という同行の男――他の三人の姿の見えないところを以てすると、それは安房峠を越えて、飛騨の方面へ行ってしまったのかも知れない。
残された二人は、悠々寛々として猪を煮ているところを見れば、この二人だけはここにとどまって、冬を越すの覚悟と見える。