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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
お雪ちゃんという子も、これだから油断がならない。
浅吉は怖る怖る、その折本を下へ持ちおろして、最初から一枚一枚見てゆくうちに、浮世絵の情味が、自分の身の中に溶け込んで、しばらく、われを忘れてしまいました。
「お雪ちゃんという子もわからない子だ、無邪気で人なつこく、同情心が深くって、神様のような心持かと思っていれば、こんな本を内密で見ているんだもの。それでも、年頃だから、こんな美しい当世風の浮世絵を見ていれば、悪い気持もしないのでしょう、にくらしい」
浅吉はこの時、お雪を憎らしい子だと思いはじめました。
事実、浅吉にあっては、このごろ中からお雪ちゃんというものが、読めたような、読めないような、心持になっているのです。
もう、年ごろなのに、無邪気で清々とした子供のような気分――かと思っていると、なにもかも見抜いて、粋を通しているようなところもあるし――あの目の見えない人を先生と呼んでいるが、何の先生だか、浅吉にはよくわからない。親類の人でもあるようだし、全く他人でもあるようだし、隔てのないほどにあまえた口を利くかと思えば、全く改まった扱いをしているのを見ることもあるし――私たちの間だって、つまり主人の後家さんの性質や、心持まで、ちゃんとのみこんでいながら、その心持で外らさず附合っているのかと思えば、全くその