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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
「それは、それは」
熊狩りの一行は、この俳諧師の出現に機先を折られた様子。
ともかく、この俳諧師一人をノコノコと平気で歩かせてよこした方の道には、とうてい熊はいないと鑑定しなければならぬ。
そこで熊狩りの一隊は、陣形と策戦の方針を一変しなければならぬ。
獲物中心の連中が、ガヤガヤとその陣形と策戦の方針を語り罵りながら、方向転換をやっている時、見学の池田良斎は、やや離れて後からくっついて、新たに出現した俳諧師を生捕ってしまいました。
「あなた、俳諧をおやりなさるのですか」
「へ、へ、へ、少しばかり……」
年の頃は、まだ三十幾つだろうが、その俳諧師らしい風采が、年よりは老けて見せた上に、言語挙動のすべてを一種の飄逸なものにして見せる。
「信州の柏原の一茶の旧蹟を尋ねて、只今その帰り道なのでございます」
「ははあ、なるほど、一茶はなかなか偉物ですね」
「え」
といって俳諧師は眼を円くし、
「失礼ながら、あなたにも一茶の偉さがおわかりですか」
「それは、わたしにも、いいものはいい、悪いものは悪いとうつりますよ」
池田良斎が答えると、俳諧師は驟雨にでも逢ったように身顫いをして、