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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
俳諧師の言葉に熱を帯びてきました。
一方の熊狩りはどこへ行ったか姿が見えません。かれらは一頭の熊のために、一頭の熊が与うる生活の資料のために、血眼になっているから、山を眼中に置かない。
こちらは歌人――とは断定できないが――と俳諧師とは、古人を論じて来時の道を忘るるの有様です。
しかし、どうやら間違いなく二人は白骨の宿へたどりつくと、池田良斎が東道ぶりで、炉辺に焚火の御馳走を始めました。
ところで、この俳諧師の、俳諧寺一茶に対する執着は容易に去らない。
「古人は咳唾珠を成すということをいいましたが、一茶のは咳唾どころじゃありません、呼吸がみな発句になっているのです、怒れば怒ったものが発句であり、泣けば泣いたのが発句となり……横のものを縦にすれば、それが発句となり、縦のものを横に寝かせば、それがまた発句です。その軽妙なること俳句数百年間、僅かに似たる者だに見ずと、時代を飛び越した後人がいいましたけれども、それでも言い足りません。一茶の句は滑稽味が多いとおっしゃるのですか。それはやはりあなたも素人観の御多分に漏れません。よく一茶を惟然や大江丸に比較して、滑稽詩人の中へ素人が入れたがります。