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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
この番附には一茶が入っておりません、たまに入っているかと思えば、二段目ぐらいのところへ申しわけに顔を見せているだけです。しかし、これは仕方がありません、点取り宗匠連が金を使って、なるべく自分の名を大きくしておかないと商売になりませんからね、一つは商売上の自衛から出ているのですが、面白いのは、一茶の子孫連中が、その祖先の有難味にいっこう無頓着で、一茶が最後の息を引取った土蔵――それは今でも当時のままに残っておりますが、左様、土蔵といったところで、一間半に二間ぐらいのあら壁作りのおんどるみたようなもので、本宅が火事に逢ったものだから、一茶はこの土蔵の中に隠居をして、その一生涯を終りました、その土蔵の中へ、ジャガタラ芋を転がして置きました、たまに、わたしどもみたような人間が訪れて礼拝するものですから、その子孫連中があきれて、何のためにこんな土蔵を有難がるのか、わからない顔をしている有様が嬉しうございました……西洋の国では、大詩人が生れると、その遺蹟は国宝として大切に保護しているそうですが、日本では、一茶のあの土蔵も、やがて打壊されて、桑でも植えつけられるが落ちでしょう。