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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

と言って気焔を吐きました。

この気焔によって見ると、道庵先生自身はエライ奴の部類に属していて、薄っぺらな奴に属していないという理窟になるのですが、米友はそこまでは追究せず、なるほどそういうものか知らんと思いました。

宇治山田の米友は、伊勢の大神宮のお膝元で生れたから、神様の有難いことを知っている。そこで道庵につづいて笠を取って、恭しく氷川大明神の前に礼拝をすると、

「こいつは感心だ、見かけによらねえ」

と言って道庵が手をうってよろこびました。

その時、道庵先生は米友に向って、

「神様を拝むには、少し遠く離れて拝まなくちゃならねえ、あんまり賽銭箱の傍へ寄って拝んじゃならねえ……ちょうど、この鳥居前あたりがいいところだろう」

と神様を拝む秘伝を教えますと、米友が解せない面をしました。

「先生」

「何だい」

「どこで拝んだって、心さえ誠ならば、それでよかりそうなものじゃねえか……よしんば賽銭箱の前で拝もうと、鳥居前で拝もうと、信心に変りがなければ、御利益にも変りはなかろうじゃねえか」

と米友が不審を打つと、道庵はそこだとばかりに、

「それが素人考えというものだ」

と一喝を試みました。