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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
ました、
「そちたちは江戸を基にして考えるからそうなるのじゃ、京都を根本として計略を立てる時には、甲斐を取るよりも飛騨を定むるのが先じゃわい。そちたちが心を揃えて助力をしてくりゃるならば、飛騨を取ることは何の雑作もないことじゃ、甲州を定むるのは、その後でよろしい」
弱冠なる貴公子が取って動かない気象のほど、侮り難いと見て、相良総蔵が代って答えました、
「仰せではございますが、われわれの今の目的は、関東を主と致します、飛騨の方面まで手の届きかねる実際は、御逗留の上、したしく御覧あそばせばおわかりになると存じまする」
「うむ。そうして、この屋敷にはただいま、何人の人がいますか」
「都合五百人には過ぎませぬ」
「しからば、そのうち三百人を、わしに貸してたもらぬか」
豪傑が沈黙してしまいました。かねて高村卿は豁達なお方とは聞いていたが、なるほどその通りだと思ったのでしょう。それと同時に実際、公卿さんの中にも豪い気象の人がいると、舌を捲いたのかも知れません。
十津川の時の中山卿、朔平門外で暗殺された姉小路卿、洛北の岩倉卿、それらは慥に公卿さんには珍しい豪胆な人に違いないが、この高村卿の突拍子には格別驚かされる。