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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
「おい番頭、この間はいかいお世話になってしまったな」
「どう仕りまして……」
幸いに、今日は何も担ぎ込んでは来なかったが、これからどうなるかわからない、これから先が危ないのだ――番頭はこの客が早く出て行ってくれればいいと思いました。出て行ってしまったら、そのあとで戸を閉めてしまおうかと思いました。
「宇津木君、先刻は、君に飛んだところを見せてしまって面目がない」
抜からぬ面の仏頂寺に対して、宇津木兵馬が、
「一足お先へ出かけました」
「さあ、いのじヶ原へ行こう」
番頭を安心させたのは、仏頂寺、丸山が店へ腰を下ろさないで、先来の客を促して、前途へ向けて出発を急ぐからであります。全く、こういうお客は、一刻も早く立去ってもらいさえすればよい。
三人が打連れて、いのじヶ原方面へ立去ったので、番頭の面に初めて生ける色が現われました。
兵馬を中に挟んで、峠の道をやや下りになる仏頂寺と丸山。
兵馬は、ここで奇態な人間だと、少々煙に巻かれました。
さいぜんの醜態は感心しないが、あの醜態を少なくとも忽ちの間に脱却して、相当に旅装を整えて、一気に、ここまで駈けつけて来た転換の早さは、相当に感心しないわけにはゆかない。