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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
と仏頂寺が合わせました。
「何をうろうろしているのだ」
先方がいう。
「吾々は亡者だから、気の向いたところを行きつ戻りつしている。君は、そうして、ちょこちょこと、どこから来てどこへ急ぐのだ」
「松代からやって来たが、これから上方へ上るのだ」
「吾々はまた、この同勢で浅間の温泉へ行こうというのだ、君も附合わないか」
「そうしてはおられぬ」
といって、この男はさっさと行き過ぎてしまいました。
「川上の奴、松代へ何しに行ったのだ」
「態々行ったのじゃあるまい、江戸からの帰りがけだろう」
こういって、仏頂寺と、丸山とは話しながら、川上と呼ばれた浪士と袂を分ちました。
兵馬は知らない人だが、その川上と呼ばれた男、見たところ柔和なうちに精悍な面魂と、油断のない歩きぶりと、殺気を帯びた歯切れのよい挨拶ぶりを聞いて、なんだか一種異様な印象を与えられました。
「あれは肥後の川上彦斎といって、穏かでない男だ」
と仏頂寺が簡単に説明してくれたので、兵馬が初めてその名を知ることができました。
仏頂寺の註釈通り、肥後の川上彦斎は甚だ穏かでない男であります。佐久間象山を殺したのも、実はこの男でありました。