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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

それを粗製して年々三都へ売り出すことにしたものだから、もとより薬草の質がいい上に品が多い。今のように木曾薬草の名が天下に知れて、長者町の道庵までがそのおかげを被るようになったのは、みなこの道益先生の親切だ――医者に限ったことはねえ、天下の政治でも、実業界の仕事でも、すべてこの人類に対する親切気から湧いて来なけりゃ嘘だな。道庵なんぞもまことにお恥かしいはずのもので、何一つ社会へ親切気を示したことはねえのに、酒ばかりくらって、諸方をほうつき歩いているのは、古人に対しても、なんともハヤ相済まねえわけのものだが……道庵は道庵だけの器量しかねえんだから、どうぞ勘弁しておくんなさい」

道庵がポロリポロリと涙をこぼして泣き出しましたけれど、この時は誰も笑うものはありませんでした。

それから道庵は長沼流の「兵要録」の原本を見たり、義民多田嘉助の筆跡を見たり、臥雲震致が十四歳のとき発明した紡績機械の雛形を見たりして、あまり甚だしい脱線もなく、この展覧会を立ち出でました。

これは初対面の人よりは、かえって附添の米友を驚かしたことで、事毎に何か脱線あるべきはずの先生が、ここでは一切脱線なしに、かえってその言う事が人々を感心させ、その見るところが玄人を敬服させ、案内する者をかえって案内して引廻すようなこともあり、そうして、それぞれ