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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

士分の者らしいのも二人や三人ではないから、それがために多きを加えず、少なきを憂えず。米友とても同じことで、自分の前の向き合った桟敷へ、四人連れの侍が来たなと気がついただけで、また幕の方へ眼を外らせてしまいました。

しかし、この四人連れの侍のうちの二人は、たしかに、仏頂寺弥助と丸山勇仙であります。あとの二人は確かに仏頂寺、丸山の友人で、風采を見ればこれもひとかどの武芸者らしい。ただし、宇津木兵馬はおりません。兵馬がいれば、米友も見知っていたでしょう。

さて、いよいよ幕があきました。

これは一番目狂言の「岩見重太郎の仇討」の第一幕。

八月十五日の夜。筑前国相良郡箱崎八幡祭礼の場。

賑かな祭礼の夜の場面。小早川家中の血気の侍が八人、鳥居の下の掛茶屋に腰をかけて話している。一人が急に、あれへ岩見重太郎が見えたという。

なるほど重太郎が来たと、一同が色めき立つ。その話によると、家中岩見重左衛門の次男重太郎が、山の中へ入って三年間、木の実を食って、このほど馬鹿になって出て来たという。なるほどボンヤリして歩いて来た。ひとつ調戯ってやろう、あんなのを調戯わなければ、調戯うのはないという。