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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
喧々囂々たるうちに、誰にもわからないのは、道庵先生なるものの了簡方です。いったい、あの先生は強いのか、弱いのか、どういう了簡で裸松の喧嘩を買って出たのか、その了簡のわかったものが一人もありませんでした。ところが、当の道庵先生はいよいよ上機嫌で、
「なあに……わしが手を下すまでのこともねえのさ……弟子に任せておいて、ちょっとあのくらいのものさ。そりゃあそうと、怪我をさせっぱなしもかわいそうだから、ひとつその裸松様というのを見舞って上げずばなるまい」
と言って道庵は、群がる人をかきわけて、倒れている裸松の傍へよって診察をはじめましたから、皆々、いよいよ気の知れない先生だと思いました。
道庵の介抱によって、裸松も正気がつきました。けれど身体が利かず、右の腕は打ち折られて用をなさなくなっていますから、気が立つだけで、仕返しをするの力は絶対にありません。生命に別条はないが、不具にはなるだろうとの診立てで、かえって土地の人が安心しました。
こうして裸松は問屋場へ担ぎ込まれる一方、道庵、米友の二人は、多数の人に囲まれて、胴上げをされんばかりの人気で、玉屋の宿へ送り込まれました。