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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
「お前さんは千里眼かい?」
「いいえ、あなた様の差しておいでになるお脇差が、ついこの間、駒井の殿様のお差料と同じ品でございますものですから」
「なるほど、これが……」
と言って田山白雲は、左の片手で差している脇差を撫で廻し、
「細かいところへ眼が着いたものだなあ、こりゃ駒井氏から貰った品に相違ござらぬ、絵を描いてやったそのお礼に、駒井がこの脇差を拙者にくれました……拙者ですか、拙者は足利の絵師、田山白雲というものです」
まもなくお角は、田山白雲を柳橋北の川長へ連れて行って御馳走をしました。
お梅はそこで別れて、いいかげんの時分に迎えに来るといって宅へ帰りました。
白雲は少しも辞退せずに、お角の饗応を受けて、よく飲み、よく食い、よく語りました。
房州で駒井甚三郎の厄介になっていたことを逐一物語ると、お角も自分が上総へ出かけて行った途中の難船から、駒井の殿様の手で救われたこと、それ以前の甲州街道の小仏の関所のことまでも遡って、話がぴたりぴたりと合うものですから、お角も喜んでしまって、
「ねえ、先生、今日は観音様のお引合せで、大変よい方にお目にかかれて、こんな嬉しいことはございませんよ」