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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

だから駒井は、ここへ来て、事に当ると、その事業の神聖と、感激に没入して、吾を忘れるの人となることができる。

それと、もう一つ――駒井をして、この自家創造の船というものに、限りなき希望と、精神とを、打込ませるように仕向けているのは、見えない時勢と、人情との力が、背後から、強く彼を圧しているのです。

駒井は、今の日本の時世が、行詰まって息苦しい時世であり、狭いところに大多数の人間が犇き合って、おのおの栗鼠のような眼をかがやかしている時世であることを、強く感じている。

国民に雄大な気象が欠けており、閑雅なる風趣を滅尽しようとしている。他の大を成し、長をあげるというような、大人らしい意気は地を払って、盗み、排し、陥れようとの小策が、幕府の上より、市井のお茶ッ葉の上まで漲っている。

創造の精神が滅びた時に、剽窃の技巧が盛んになる。このままで進めば、日本国民は、挙げて掏摸のようなものとなってしまい、掏摸のような者を讃美迎合しなければ、生活ができなくなってしまう。その結果は、国民挙げて共喰いである……心ある人が、こういう時世を悲憤しなければ、悲憤するものがない。