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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

30 畜生谷の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 页

青空文庫

のこともあればあるものと見直したのですが、お雪ちゃんも同じ思いです。

「そうして、なんでございますか、御病人は、白骨で病み出しておいでになりましたか」

「はい、どうもとんだ災難でしてね」

「どちらのお方でございますか」

「高山の者なんですが、ついつい、あんなところに長居をしたばっかりに、こんなことになってしまいました、ホンとによせばよかったのですがね」

「ははあ」

久助も、お雪ちゃんも、ほとんど烟にまかれてしまいました。

白骨は、つい今まで自分たちの隅々隈々までも知っていたわが家同様のところ、どう考えても、急にこんなになりそうな人は思い出せないから、二人は面を見合わせたっきりでいると、

「さあ、それでは皆さん、もう一息御苦労」

「はいはい」

釣台をかつぎ上げた時に、揺れた調子か、山風にあおられてか、面のあたりにかぶさっていた白い布の一端が、パッとはね上ると、その下に現われたのは、久助は傍見をしていたが、馬上のお雪ちゃんは、ハッキリとそれを認めて、

「あっ!」

あたりの誰人をも驚かした声をあげたが、それよりも当人のお雪ちゃんが、土のようになってふるえたのは、覆われた白布のうちから見せた死人の面は、例のイヤなおばさんに相違なく、まだつやつやしい髪の毛がたっぷりと――あの脂ぎった面の色が、長いあいだ無名沼の冷たい水の中につかっ