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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

30 畜生谷の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,962 字 · 145 页

青空文庫

或いは軽俊に走せ違って飛行するのもある。或いは打連れて谷川をかち渡るのもある。或いは子をいたわって丘を上るのもある。或いは牝牡、むつまじく交尾するのもある。かくして夕陽の峰に隠るる頃になれば、やはり人間の来って迎えざるに、おのおの隊伍を組んで、また以前の厩に帰って、おとなしく納まる。

公達と兵馬とは、親しくその光景を見て、動物の有する相互扶助と、それから、無政府状態にして一糸乱れざる統制ぶりに、まず感心させられました。感心して後、彼等の仲間に分け入って、公達がいきなり、駒の勇ましい奴を一つつかまえて、乗ろうとすると、その駒はいたく驚いたようでしたが、周囲の馬もまた、長い面と、黒い眼を驚かせつつ、いたずら者の為すところに、やや恐怖の念を抱いたようではありました。

さりながら、この二人連れの者にいささかも害心がなく、やはり駒同様の、はずみきった若い人間種族が、我々と遊びたいがために、わざわざここまでやって来たに過ぎないのだ、我等をとって以て、肉親の愛を剥ぎ、これを市場に売ろうとして出て来たばくろうの類でないことを知り、いわば、これは、我等のための珍客であるというよりは友達である、この珍しき友の、遠方より来るものに向っては、充分の好意を披瀝せねばならぬとでも考えたのでしょう、暫くして馬共は、欣んで二人のために