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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
33 不破の関の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页
は向きそうもない、自分は利酒ではないが、どうも将来とても日本人が、こんな苦くて大味な酒を、好んで飲むようになれるかなれないか考えものだと思い、それと同様に、異人がまた日本酒の醇なやつを、チビリチビリと飲むというような味が分って来そうにもない、どうも、日本の酒と、異人の酒とは、趣味のドダイが違うから、将来、あっちの酒をこっちへ持って来て売るようにはなれまいし、こっちの酒を向うへ盛んに売り出すようにはなれまい、そうすると、異人を目当ての酒の交易は、まあ当分、見込みはない、なんにしても今時、向うから持って来て、こっちへ売れるのは鉄砲だ、酒と違って、向うの鉄砲だってこっちの人間を殺せる、しかも殺し方が遥かに優れている、鉄砲を持って来て売り込むことは的を外れないが、それだって、日本の鉄砲は向うへ向けて売り物にならないから片交易だ。
忠作は、こんなことを考えながら、一杯一杯と好きでもないビールを呑んでいるところへ、突然扉を叩く者がある。
「どなた」
「忠ボーイさん、御在館でげすか、ほかならぬ金公でげすよ」
おっちょこちょいの金助が来たな、と忠作は直ちに知りました。