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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

それもよくないが、せっかく金椎さんが丹精して皆さんに旨く食べさせようとしてこしらえたお料理やお饅頭を、盗んで来て食べたり、食べさせたりするマドロス君の行いも、道に外れていると思います」

「茂ちゃん、もうおよし、そうしてお前は、あちらへ行って登様のお守をなさい」

お松はついに、厳しく叱りました。叱られて船長室を飛び出した茂太郎、上甲板の方で、早くもその即興の出鱈目歌が聞えます――

お饅頭をこしらえる人と

それを盗む人

せっかく、殿様が

新しい国をこしらえても

汗水を流して働く人と

寝ていてお饅頭を食べる人とが

あってはなんにもなりますまい

駒井甚三郎は船を作り

田山白雲は絵をうつし

裏宿の七兵衛は耕し

お松様は教育をやり

金椎君は料理をし

治郎作さん父子は船頭をし

乳母はお守をし

登様は育ち

清澄の茂太郎は歌う

それだのに

兵部の娘もゆるさんは

病気でもないのに

寝て旨いものを食べています

それはマドロス君が

持って行ってやるからです

お饅頭の掠奪は

パンの搾取ということには

なりませんか

いい着物を着たり

旨い物を食べたりするために

みんなが気を揃えて

働くのはいいことだが

旨い物を食べるために

盗んだり

誘惑したりするのは