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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

33 不破の関の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页

青空文庫

賢くも米友は、こうも感づいたのですが、そこは上手の手からも水が漏れるので、米友が道庵の声に驚いて立ち上った瞬間の隙を覘って、右の駄々ッ子が素早く陸へ飛び上ったかと見ると、通りかかった子供が三人、火のつくように泣き叫びました。

「それ見たことか」

幸いにして、まだ子供を引裂いて食っているというわけではなく、子供の方へ向って馳け出しただけのところを、米友が後ろから行って引捉えると、それを振切って、人間の子供と遊ぼうと駄々をこねる熊――そうはさせじと引き留むる米友。この際、熊を相手にくんずほぐれつの仕儀となりました。

「ちぇッ――仕様がねえ熊の餓鬼だなあ」

米友は歎息しながら熊を取って抑える。事実、米友なればこそです、子熊とはいえ、羈絆を脱して自由を求むる本能性の溢れきったこの猛獣族を、この場合に取って抑えることのできたのは米友なればこそです。

こうして子熊を取って抑えて、むりやりに檻の中に押込む米友、

「ちぇッ――聞きわけのねえ餓鬼だなあ」

全く今の場合は、熊と組打ちなんぞをしている場合ではないのです。師と頼み、主とかしずいて来たその先生が、苟も、「友様! 後生だから助けてくれ!」