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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
33 不破の関の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页
米友のこの哀求は、このままで受入れられるべくもありません。
「ふざけやがるない、こん畜生、馬に乗りたけりゃ、助郷の駄賃馬あ銭ゅう出して頼みな、こりゃ人を乗せる馬じゃねえんだ」
「そんなことを言わねえで」
「この野郎、餓鬼のくせに、馬泥棒をかせぎやがる、いけ太え畜生だ」
「おじさん、場合が場合だから、ね、貸してくんな、決して悪いようにゃしねえから、頼むから、後生だから」
「河童野郎、手前の方は場合が場合か知れねえが、おれの知ったことじゃねえ」
「わからねえおじさんだな、人助けになるんだからいいじゃねえか」
「ふざけるなよ、馬泥棒、手前の方は人助けになるか知れねえが、おいらの馬は助からねえ」
「そんなことを言わねえで、こういう場合なんだから」
「いけねえ……」
米友が再び馬の上に躍り上ろうとするのを、馬子が力任せにひきずり下ろした上に、ポカリと一つ食わせる。
「あっ! 痛え」
「あたりめえよ、手前、気がふれてやがるな、いきなり横から飛び出しやがって、人の馬に飛びついて、よこせの、貸せの、途方もねえ野郎だ、見せしめのためだ、この河童野郎、どうするか……」
甚目寺の音公は、米友を引きずり下ろしておいて、力任せにポカリポカリ擲りはじめました。