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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
33 不破の関の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,467 字 · 168 页
彼等は強盗をしない、小細工をしない、見かけは鬼のようであって、実は淡泊にして、親切にして、且つ苦労人であって、同情ということを知っているが、決してそれを押売りはしない。
彼等は、落ちたりといえども一国一城の主をもって自ら任じ、決して親のつけた名前なんぞを呼ぶものはない。
試みに、天下の街道から、この愛すべき雲ちゃんを取去ってみると――
交通はぱったりと止り、景気はすっかり沈んで、五十三次の並木の松には不景気が首つりをする。雲助があって天下の往還があり、天下の往還があって雲ちゃんがある。
嗚呼、敬愛すべきわが自然児雲助諸君、おらあほんとうにお前たちに惚れたよ。
おおよそこういったようなもので、道庵先生の雲助に対する礼讃ぶりは最大級のものに達しているのは、一つには、これは折助の卑劣なるものに対する日頃の反感が手つだっているとはいえ、また今日のぶったくりなんという振舞が、すっかり道庵の気に入ってしまったものと思われる。当時泣く子も黙るところの長者町の大先輩ともあるべきものを、一言の挨拶もなく、いきなりふんづかまえて、手前物の駕籠の中へ押込み、約十里というがもの宙を飛んで、ところも嬉しい関ヶ原の野上へ持って来て、さあ、どうでもなりゃあがれとおっぽり出した度胸なんぞは、まことに及び易からざるものじゃないか。