轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

常の時でさえお銀様は、その人のことを思い出すと涙を流して泣く。歴史上といわず、およそありとあらゆる人間のうちで、お銀様をしてこれほどに同情を打込ませる人は、二人とないと言ってもよいでしょう。その人は誰ぞ、それがすなわち大谷刑部少輔吉隆その人なのであります。

その好きな人を、その人の最期の地で、夢に見たのだから本望です。本望以上の随喜でした。あの盛んな大芝居を夢見てしまった後のお銀様は――

――石田三成も悪い男ではないが、大谷吉隆はいい男だねえ。

わたしは日本の武士で、まだ大谷吉隆のようないい男を知らない。今はその人の討死した関ヶ原へ来ている。あのいい男の首塚が、ついこの近いところになければならぬ。

わたしは何を措いても、あの人の墓をとむらって上げなければならぬ――明日、明朝――いいえ、今夜これから、ちょうど、月もあるし……

大谷吉隆の首を、わたしはこれからとむらってあげなければならない――

かくてお銀様は、月の関ヶ原をさまよい尽して、ついにどこよりか一塊の髑髏を探し求めてまいりました。

その髑髏が果して、大谷刑部少輔の名残りの品であったか、なかったか、そんな詮索は無用として、お銀様は心ゆくばかりその髑髏を愛しました。