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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

というのは、お蘭どのの当座のお手許金の三百両は、飛騨の高山に於て、がんりきの百が取り上げて、宮川べりの和泉屋の福松という芸妓のところへ預けたには相違ないが、当の女が行方不明になってしまった、夜逃げをした、駈落をしてしまったというのでは喧嘩にもならない。その逃げた先、落ちたあとをたどれば、たどれない限りはないが、三日の期限では、いくらがんりきの怪足力をもってしても不可能である。そういうわけだから、ひとまず手を空しうして帰って来たが、こうなるとがんりきも意地だから、また出直して白山街道から、北国筋、あの女の落ち行く先々を飛び廻って、きっと取戻してお目にかけるというのだが、もうお蘭どのが信用しない。

「だから、男の口前になんぞ乗るもんじゃない、だろうと思っていましたから、あんまり乗りもしなかったけれど、でも、気を使っただけばからしい」

お蘭どのの御機嫌が斜めなので、がんりきは、御機嫌を見はからって二段構えを持出しました。そろそろと片手を、持って来た包へあてがって引寄せながら、

「それは、そういうわけだから、喧嘩にもならねえ、いかにもその点は、百蔵、お前さんの前へ頭があがらねえのだが、転んでも只起きるがんりきだと思うとがんりきが違いまさあ」