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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

「ええ」

「いつごろ、お帰りになりやすか」

「近いうちにお帰りになるでしょうが、たまのお出先のことだから、また、何か別な御用向が起るかも知れましねえ」

「与八さんが来てから、あのお屋敷へ光がさしたと、みんなが言ってますよ」

「どういたしまして」

こんな挨拶を交している間に、徳大寺様はじめ、お婆さん、お侍、みんなお墓に対して回向礼拝を終り、さてこれから、お婆さんは徳大寺様と一緒に、甲府へ行くということになりました。

与八としては、この竜王村への用事を兼ねてなのですから、ではこれでお暇をしましょう――ということになって、お婆さんは与八に厚く礼を言った上に、

「与八さん、ちょっとこちらへいらっしゃい、このお方は、徳大寺様と申し上げて、畏くも天子様の御親類に当る身分の高いお方でいらっしゃいます――お目通りをしてお置きなさい」

と言って、徳大寺様へ向いては、

「何と珍しい心がけの、人相のよい若衆ではございませんか、鳩ヶ谷の三志様にそっくりだと、わたしは見ているのでございます、お見知り置き下さいませよ」

と言って、二人を引合わせました。

九十六

かくて、徳大寺様、おつきの侍と、お婆さんとは、ここを立って甲府の方へ向けて、田圃道の間を歩み去りました。