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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
金公は抜からぬ面で、いつもの持論をまくし立てる。
今の日本人は、毛唐に対して、威張れば威張るほど損をする。威張っている上流の人間ほど、毛唐から借金をしたがったり、毛唐に罰金を取られたがっている。
それに反して、日本の絹糸を売り込みさえすれば、毛唐は喜んで高金を出して買って行く。それがために、どのくらい日本へ金が落ちるか知れない。
それと、もう一つは、この鐚助独特のラシャメン立国論で――こいつが臆面なく喋り立てるラシャメン立国論というのは、つまり次のような論法である。
露をだに厭ふ大和の女郎花降るあめりかに袖は濡らさじ――なんてのは、ありゃ、のぼせ者が作った小説でげす。
拙が神奈川の神風楼について実地に調べてみたところによると、その跡かたは空をつかむ如し、あれは何かためにするところのある奴がこしらえた小説でげす。
事実は大和の女郎花の中にも、袖を濡らしたがっている奴がうんとある。毛唐の奴めも、女にかけては全く甘いもんで、たった一晩にしてからが、洋銀三枚がとこは出す。月ぎめということになるてえと、十両は安いところ、玉によっては二十両ぐらいはサラサラと出す。