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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

しかし、事実はここで役人に提示したのだから、これよりあとへ飛んで戻るはずはない。柳田平治はまず店先よりはじめて、その辺を隈なく探し求めましたけれども、ついにそれらしい何物もありません。

柳田はついにその長剣を背中へ廻して、低い縁の根太の下まで探してみたけれども見出せないのです。白雲も同情して、そこらあたりを漁って見てやったけれども、発見することができません。

さしもの豪傑も、ここに至っていたく銷沈気味でした。

茶店の老爺も気の毒がって、炉辺のござまでめくって見せたけれども、附木っ葉と、ごみと、耳白が三つばかりあるほかは何物もありませんでした。もしやと、少し下りて船頭小屋から渡し場のあたりまで調べてみたけれども、ついにそれらしい何物もありませんでした。

「もうやむを得ん」

と言って柳田平治は、腕組みをしたまま突立って、川原の彼方を無念そうにながめました。

居合にかかろうとする瞬間である。問題はそこだ。そこでいったん懐中へ蔵い直したはずの手形が紛失したのだ。

「どうも見えないね、君」

白雲は慰め顔にこう言うと、腕を拱いていた柳田平治が、

「是非に及ばんです、いや、僕が悪いのです、こちらに隙があったからです、修行が足りないからなんだ」