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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

37 恐山の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页

青空文庫

「デハ――もゆるサン……」

マドロスが無恰好の背中を向けると、毛布を頭からすっぽりかぶったままの兵部の娘を、短身長剣が押しつけるようにして、マドロスの背中にたけると、やむことなく、それをおぶい、それにおぶさって、二人はまずバッテイラから本船に乗り移る。出でむかえて見ている水夫共は、苦々しい面をして睨みつけているが、さすがに、それをぶちのめす者もない。お松だけがかいがいしく、

「マドロスさん、あなたにも全く困りものです、みんながドノくらい心配したか知れやしません、まあ、ともかく、わたしの船室へいらっしゃい、委細をお話ししてから、船長様へ、わたしがお詫びをしてあげます」

百四十四

最後にバッテイラから、本船に上った短身長剣――柳田平治は、

「では、君たち、あの小舟の始末を頼むよ」

と言い捨てて、続いて船室へと導かれて行こうとすると、そこへ、いつのまにか檣の上から下りて来た清澄の茂太郎が立ち塞がって、

「君――田山先生は帰らないの」

「あ、田山先生はな……」

と柳田平治は、この少年のために甲板の上に暫く抑留の形となって、

「あとから帰るよ」

「では、七兵衛おやじは――」