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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
真闇な晩です。
しかしまた、真闇ということは、決して常人ほどに七兵衛を難渋させる事情とはならない。彼は弁信のような神秘的な勘は持っていないが、多年の商売柄と、それから幾分の天才とで、暗中よく相当に物を見るの明を保有している。そこで暗いということは苦にせずして、怪足力に馬力を加えて行っているうちに、幸か不幸か、遥かに彼方にたしかに一点の火を認めました。
火のあるところに人があり、文明がある、という哲理は、前に田山白雲の場合にも書きました。七兵衛は、その敏感な眼を以て、数町か、数里か、とにかく行手のある地点で一つの火光を認めてしまったものですから、七兵衛ほどの曲者も、
「占めた!」
と叫んで、その怪足力がまたはずみ出したのはやむを得ません。
七兵衛の眼はあやまたず、たしかに一点の火光があり、その火光を洩らすところの一つ家がある!
だが、およそほかと違って、安達ヶ原の一軒家――見つけたことが幸か不幸かわかるまい。
百四十九
「そうだ、安達ヶ原の黒塚には鬼がいる!」
七兵衛ほどの代物だが、それと感づいた時に一時は、たじろぎました。
安達ヶ原といえば、誰だって「一つ家」