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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
お雪ちゃんが提出するほどのものは、いちいち苦もなく取って投げたが、そのうちに、ちょっと一つにひっかかって眼を白黒し、
「うむ、ええと、こいつは……こいつはちょっと難物だぜ、大医博士深根輔仁の『本草和名』にもねえ全く変り種だ、だろう、多分なあ、こいつがそれ、キバナノレンリソウとでもいうやつなんだろう、確とは言えねえがね。なんしろ、お前さん、この胆吹山というやつが、織田信長の時に、薬園相応の土地だとあって、五十町四方を平らげて薬草を植えたんだからな。その種類が、ざっと三千種に及んでいるということだから、道庵がいかに博学だって、お前、そうは覚えきれねえわな。それにお前、大医博士深根輔仁の本草ばかりじゃあ間に合わねえ、キリシタンバテレンの宣教師てやつが、あっちの薬草を持込んで植えてるから、どうもいけねえよ、キリシタンバテレンは昔から道庵のお歯に合わねえのさ」
と言って、道庵先生は、薬草の中のわからないのを一つごまかしてしまいました。
お雪ちゃんは別に、道庵先生を困らせて手柄とするために難問を提出したわけではないから、そのくらいで打切って、そのまま、道庵先生に引添うて登りにかかりましたけれども、きりっと足ごしらえをしているに拘らず、道庵の足許が甚だあぶないのは、いよいよ以て先生のハイキングが怪しいものであり、お雪ちゃん