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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
37 恐山の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 254,021 字 · 495 页
をして、これまでまいりましたような次第でございます」
飛脚が長々と物語るのを、関守氏はなるほどと聞きました。
「御尤もです。ですけれど、われわれがお附き申している上は、その辺はまず御安心くださるようお伝え願いたい――拙者は、つい先頃まで、昔の不破の関屋の跡の留守番をつとめておりまして、もとは名もなき中国浪人なのですが、つまらないことから国を出て、もうかなり娑婆ッ気は抜けました、人を焚きつけて旨い汁を吸おうなんぞという骨折りは頼まれてもやれません。しかし、お銀様のなさることは、空想のようで、必ずしも空想ではないのです。どうせ、この浮世のことですもの、永久に牢剛なるものとてはあるはずはない、まず、やるだけやらせてみることです、思ったほどに危険はありませんよ」
三十九
飛脚とはいえ、ただ通信機関の役目を果すだけの使ではなく、よく情理を噛み分けて話のできる相手だと思いましたものですから、不破の関守氏も洒落にことを割って話しかけたようです。
座敷と縁とで、二人がこうして話し合っている間、上手の方では、鑿や鉋の音が相当賑わしいのですが、一方の淋しい庭の木戸口から、不意にこちらへはいって来たものがありました。