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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
38 農奴の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,484 字 · 60 页
幕府勘定方役人の生命も刻々危急に瀕している――
十八
なお、そのことのあった前後、青嵐居士がまたしても、胆吹の山荘に不破の関守氏を訪れての会話が漸く興に乗ると、次のようなことを滔々と論じ立てました、
「そもそも徳川氏ばかりが、農民の敵だと言いふらすやからは、二を知って一を知らないものですよ――例の豊臣氏なんぞが、むしろ農民を搾る方の本家と言ってしかるべきでしょう。たとえばです……
日本に於て、農民が最も幸福であった時代は鎌倉時代、とりわけ北条時代であったのですが……さて、応仁の乱以後、天下を平定した豊臣秀吉というものが、御承知の通り、彼は全く名もなき農民の出でありましてな、そんなら、その純粋の農民の出であるところの豊臣太閤というものが、どういう扱いをその親元の農民に向って試みたかと申しますと、まずあの時のあの人が行った『検地』というものでよくわかりますな。秀吉の時までは一段歩は三百六十坪であり、一坪は六尺五寸平方であったのですが、それから一段三百坪に改め、一坪を六尺三寸平方とし、これによって約二割以上の増収を農民の上に加えたのであります……