轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
駒井甚三郎もまた、踏む足がおだやかではありません。思いなしか、その白い頬の色が、木の間の月に輝いて、この人としては滅多に見ることのできない血の気を湧かせているやに見えないこともありません。お松の思い上った、不遜に近い歩みぶりを、決して不快なりとはしていないようです。
かくて、二人は椰子の木蔭を、かの新館なりと覚ゆる方面に向って、無言で歩きました。それは主従相伴うて歩むのでなく、二個の人間が相携えて行くもののようです。
椰子の林をわけて行くといっても、それは熟地に見るような簡単なものではないのです。蛮地ではないけれども、多年の無人島ですから、たとえ隣から隣へ行くにしても、道というものはないところなのです。そこへ、心あたりだけの道をつけて進むというよりほかに、進む道はないのです。自分たちの住む新館は、たしかあちらの方と、漫然とした道方角を選んで歩いても、それがそのままに通り抜けられるかどうかはわかりません。
で、二人は、方向の目的はきまっているが、その径路のことは忘れているようでありました。
無言で、ずんずん歩み行くこと、そのことだけに気が張りきって、到着の時と、ところと、そんなことは忘れてしまったのではないか。