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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
と言って、作ということを言わないから、仁王尊そのものの右が運慶尊、左が湛慶尊になりきって、本体と、作者が、見事に習合せしめられている。識者はそれを笑い、愚者はそれに感歎する。案内者自身はまた、右が運慶尊、左が湛慶尊と信じきって、眼中に信仰と芸術の差別なきところが、お愛嬌のようなものであります。
そこで、お銀様はじっと立って、この特異の大画を上から下へ、下から上へ、見上げ見おろしてじっと立ちました。
この怪異なる、人ともつかず魔ともつかぬ大画像は、いったい何を意味しているのか、不幸にしてお銀様にはこれがわかりません。
ただ見るところは、不動尊以上の不動尊の形相を呈しているが、不動のような赤裸のいつわらざる形体を誇っているのではない、身辺はあらゆる紅紫絢爛たる雑物を以て装飾され、彼の如く、しかく単純に剣と縄との威力を誇示するには止まらない。なるほど、不破の関守氏から予備知識を与えられた、これが三十六臂の形式というものでしょう。一つの形体から三十六の手が出て、それがおのおのの方向に向って、おのおのの武器を持っている。世には千手観音という尊像もあるのだから、三十六や七は数に於て問題でないが、その生血の滴る現実感の圧迫にはこたえざるを得ない。