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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

41 椰子林の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页

青空文庫

「うむ――洛北岩倉村というのはな」

そこは不破の関守氏も抜からぬもので、がんりきの百のために、洛北岩倉村の地理を説くことかなり詳かなものであります。

その説くところによると、これから、日岡の峠を通って蹴上粟田口へ出るが、三条橋は渡らずに、比叡山の方へとずんずん進んで、それ、名代の八瀬大原の方へ行く途中のところにその岩倉村というのがある。そこの岩倉村は岩倉中納言の領地で、大バクチはその中納言殿の屋敷の中で行われるのだ――という説明を皆まで聞かずに、がんりきの百蔵が、急に白けきった面をして開き直り、

「へえ、上方じゃあ中納言様がバクチを打つんでげすかエ」

「いや、中納言殿がバクチを打つのではない、その岩倉村の山ふところにある中納言殿のお屋敷の中で、大トバの開帳が行われると言うのだ」

「へへえ、考えやがったな、江戸でも御老中の屋敷の中なんぞで、そいつが、しょっちゅう御開帳になるんですよ、仲間や馬丁が、寄ってたかって御老中のお馬屋の中で、しゃそじょうこてやつをきめこむんでさあ、御老中でさえその位なんだから、中納言様ときちゃあ豪勢なもんだろう、フリにこっちとらが行ったって歯が立つめえがなあ」