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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
してみると、ここまで、世間の漂流記にあるような極度の欠乏や困苦から、この船員はすべて免らされて来ている。天候と言い、健康と言い、珍しいほど好条件に恵まれているもので、ある意味では、世界周遊の遊覧船に乗せられて、たまたまこの地に船がかりをしたような気分をさえ与えられるのでありますが、前途のすべてが、こんな洋々たる気分ばかりではあるまい、ということは誰にも予想されるのです。
ことに船長の身になってみると、現在の好条件がかえって、未来の多難を暗示するような考慮もないではない。それをまた本当に思いやっているのが、船長についではお松です。白雲は豪放で、それらの点には、さのみ頓着はしていないようです。
お松は、一通り甲板から各船室を見舞った上に、ひとり船長室へ来て留守をつとめていながら、眼の前に浮ぶ島と、それに向って漕ぎ行く駒井と白雲一行の小舟を、窓の内から見送って、希望と心配とに張りきっておりました。
二十一
ここにもう一つ、隠れたる功績をうたわなければならないことがあります。
それは、メイン・マストの上にいる清澄の茂太郎であります。
この少年は出鱈目をうたい、足拍子を取り、また興に乗じて踊り出すことに於て、船中の愛嬌者とはなっていますが、愛嬌者以上の実用の功力を認められたこと、今度の航海の如き