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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
41 椰子林の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 178,374 字 · 345 页
幸い、農事にかけては七兵衛入道が万事本職で、熟練した指導ぶりを見せていますから、仕事の捗ること目ざましきばかりです。
そのうちにも、休息と、慰安の時間は多分に与えられて、仕事の余暇は、おのおのその楽しむところを発揮するの自由を与えられましたから、ほんとうにすべてがトントン拍子で、幸先は決して悪いものではありません。
駒井甚三郎は新館の一室を書斎とし、一室を寝室とし、食事は多勢と共に食堂兼用の広間ですることもあれば、書斎に取寄せて済ますこともある。駒井の次の一間は、秘書役のお松の部屋です。
お松は、駒井の秘書と、内政と、その事務の助手のすべてを兼ねて、なくてならぬ人です。
駒井が研究に没頭して事務に遠ざかる時は、お松でなければ駒井に代って取りしきる人がありません。田山白雲は豪放磊落を以て鳴り、このごろは、その附近の異風景の写生に専らで、義務として開墾に応分の力を出すほかには、細務に当るの余暇がない。時としては、島めぐりに日を重ねて帰ることさえある。
いちいち、駒井船長の指揮を仰ぐことの代りに、お松さんに相談すれば、大抵の用は足りる、というところから、お松の地位が、責任と繁忙を加えて来るのはぜひがありません。