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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

と尋ねますと、地蔵さんが、おれ喰ってしまったとお返事をしたので、婆は帰ろうとしたら、待ってろ待ってろ、いいこと教えてやると、地蔵さんが引止めて、おれの膝さ上れ――と言いました」

「…………」

「地蔵さんから膝さ上れと言われて、婆は『とっても勿体なくて、上られえん』と言いますと、地蔵さんが、いいから上れと申しました」

とってもとっても

勿体なくて

上られえん

膝さ上れ

上られえん

茂太郎は、老女の昔話のうちの奥州訛を面白く心得て、口真似に節をつけて唄い出しました。それに老女はあまり取合わず、

「すると地蔵さんは、いいから上れと言いますから、婆は恐る恐る地蔵さんの膝さ上ったら、今度は地蔵さんが、手のひらへ上れと申しました。婆は『とってもとっても勿体なくて上られえん』と言いますと、地蔵さんが、いいから上れと言いました」

とっても

とっても

勿体なくて

上られえん

とっても

とっても

茂太郎がうたい出す、老女がかまわず昔話をつづける。

「そこで婆は恐る恐る、地蔵さんの手のひらへ上ると、地蔵さんが今度は、肩の上さのぼれと言いますから、婆は『とってもとっても勿体なくて上られえん』と言いますと、地蔵さんが、いいから上れと言いました」