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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
船の休養と修理のためにも、少なくとも約一二カ月はここに碇泊している必要を聞き知っている白雲は、ここでその期間を利用し、行方不明の二人の船族と、それからなお進んでは風景の見学と、つまりいわゆる一石三鳥の妙案を独断的に提出すると、駒井甚三郎も、
「では……そういうことにお願いしますかな」
白雲一人に使命を託することが、粗放のようで、実は最も安全にして確実な方法だと思案したのでしょう。お松はムク犬と共に、ぜひ白雲先生のおともにと申し出たけれど、それはかえって辛抱する方がおたがいのためだということを説得されて、それが呑込めない子でもありませんでした。
かくて白雲は、例のいでたちを以て、その翌朝、ひとりこの船を立って、一石三鳥の目的のために出かけることに評議がまとまりました。
その出立の前に当って、賢明なるお松は、こういうことを思案しました――そんなこんなの出来事のために、自分の心に大きな悩みを持たせられているけれども、それよりも、こんなことのために、船長の意気を沈ませてはならないこと、船中の人々の気を腐らせてもいけないということ、だから、自分がまず誰よりもつとめて快活にして、船長をはじめ皆の気を引立てることにつとめなければならない。