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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

34 白雲の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页

青空文庫

女史が学者であるということを知らないで見れば、それ者と見たかも知れないほど粋な美人でした。もはや四十の坂を越していようと思われるのに、姿、かたち、どう見ても二十台で通るのです――それに、永く江戸で修業して、婦人の身で塾を開いて、生徒を教えていたというほどですから、その応接もことごとく江戸前で通り、白雲をして、俄仕込みの奥州語を応用せしめる必要は少しもありませんでした。

女史は、この遠来の客を欣んで、相語るほどに、両々の興味が加わって、話はいつ果つるとも覚えません。

その夜も――夜もすがら、語っても語っても尽きないものがありました。

「そういうわけで、拙者の奥の細道は、狩野永徳というそぞろ神にそそのかされたのですが――明日はとりあえず、観瀾亭へ行って永徳に見参したいと思うのです、簡単に許されましょうかな」

こういって女史にたずねると、女史は、

「それは容易いことです、月見御殿の拝見ならば、よい伝手がございますから、わたくしが御案内を致しましょう、山楽の襖絵といわれますものは、わたくしもかねて拝見は致しておりましたが、あなた様と御一緒に拝見すれば、またよい学問を致します」