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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
34 白雲の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,838 字 · 204 页
それは、駒井とこの土地とは、古い馴染があるからのことで、その由緒を語れば、今より約十年以前、この仙台藩で開成丸という大きな船を造った時にはじまるのです。
その時に、江戸から三浦乾也が来て、仙台のための造船の一切の監督をしてやりましたが、当時、一青年学徒としての駒井甚三郎は、船を造る興味と研究のために、わざわざここへやって来て、その船で江戸までの廻航に便乗したということがあるというわけでした。
ですから、駒井にとっては、この地は曾遊の馴染があって、その当時、藩の要路にも充分の懇意があったものですから、相当の気安さで旅行もできるし、また石巻、松島、塩釜、仙台の間は、通学の往復路のようなものでしたから、少し立入れば、今でも顔馴染がいくらもある。
そういうわけですから、駒井は、極めて無事安全に仙台城下に着いて、まず養賢堂の学頭を通じて、このたびの来着の挨拶をすると共に、当分、この地――月ノ浦に船をとどめて、修補に当りたいことの諒解を求めると、順調にその要望が達せられて、幾多の便宜が与えられるようになったのは、痩せても枯れても直参の面であることを、駒井がいまさら認めないわけにはゆきません。