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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页

青空文庫

お浜は、また暫らくの間はぼんやりと坐っているばかり、郁太郎は幸いにすやすやと眠っています。

「兵馬を殺す」

と言った竜之助の一言、それがお浜の胸を刺す。

竜之助も眠りに就いたようで、例の唸る声、キリキリと歯を噛む音。

お浜は思い出したように立ち上って次の間へ行ってみました。

竜之助の机の上には、さきほど書いていたらしい手紙が三本。お浜はそっとその一つを手に取って見ると、それは宇津木兵馬からの果し状でありました。

「武道の習にて果合致度、明朝七ツ時、赤羽橋辻まで……」

お浜は読み去って宇津木兵馬と記された署名のところに来て、はじめて万事の合点がいったのであります。

殊勝なこと、こうも立派な果し状を人につけるようになったとは。自分の知ったのは十三四の可愛ゆい兵馬、それがまあ……それにしても、やっと十六か七、これまでには相当の修行も積んだことではあろうけれど、何というても竜之助の腕は豪いもの、刀を合せれば竜之助の酷い太刀先に命を落すは知れたこと。お浜は一途に兵馬がかわいそうです。

「うーん」

またしても魘される竜之助の声、兵馬を斬って血振いをするのかとも想われる。