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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

中里介山『大菩薩峠1』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,314 字 · 398 页

青空文庫

「兵馬を斬つて後、拙者は予ての手筈の通り京都へ立退き申すべく……」

という文言です。

この手紙を見れば、竜之助が今日の果し合いに立合う覚悟は勿論のこと、立合えば必ず兵馬を斬ることに自分できめ、兵馬を斬れば京都へ飛ぶその手筈まで整うていたものと見えます。それほどの覚悟が出来ながら逃げるとは何事であろう。これは誰にもちょっとわかり兼ねたところであるが、お浜を殺したのも竜之助であろうとは――誰人にもそのように想像されるのでありました。

十二

「どうも永らく御無沙汰を致しました」

妻恋坂のお絹の宅へやって来たのは珍らしくも裏宿七兵衛。

「これは珍らしい七兵衛さん、どうしたかと心配していました」

「つい百姓の方が忙がしいもんでございますから。それに、骨休めを兼ねてお伊勢参りをして来たものでございますから。これはわざっとお土産の印」

「それはお気の毒な。お前さん方は、ほんとに羨ましい身分ですね、稼いでおいてはお伊勢参りだの、江戸見物だのと気晴らしができますから」

「へえ、どう致しまして」

「並のお百姓では、そんなにチョイチョイ出て歩けるものではありません」