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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
中里介山『大菩薩峠10』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 页
「冗談じゃない……」向う横町の貸家の、敷金と家賃をたしかめに行くのとは違い、いやしくも江戸城の大奥の間取りを、ちょっと見て、ちょっと帰って来る、というようなことが出来得べきことではない。そんなことは、われわれが駄目を押すまでもなく、神尾自身が先刻心得ていなければならないはずのこと。
「そりゃいったい、何のおまじないだ」
犬は外でどうやら吠えやんだ様子。犬は静まったが気のせいか、周囲の竹藪が、しきりにザワザワとざわついているらしいのが一層気になる。
「ハハハハ……」
と神尾は、わざとらしく高笑いして、このところへ、今その当人の現われ出づるのを待つもののようです。
だがしかし、主膳の言うことは嘘ではありませんでしたが、見当違いでありました。
その使の者というのは、戻って来たのではなく、これから出て行くところであります。
出て行く時に、尋常に門をくぐらないで、門の中に生えた竹によじのぼり、その竹のしない具合を利用して、ポンと塀の外へ下り立ってしまったものだから、おりから通りがかりの野良犬を驚かしたものと見えます。
この男は地へ下り立つと、パッパと合羽の塵を払い、垣根越しに屋敷の奥の方の燈の光をすかし、それから笠を揺り直し、草鞋の紐をちょっといじってみて、