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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

中里介山『大菩薩峠11』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 页

青空文庫

だが、その美しさも、いじらしさも、束の間で、橙の黄なる空の色が、白蝋の白きに変る時分に、山々は一様に黒くなりました。

一様に黒くはなったけれども、少しもその個性を失うのではない。槍は槍のように、穂高は穂高のように、乗鞍は乗鞍のように、駒ヶ岳は駒ヶ岳のように、焼ヶ岳は焼ヶ岳のように、赤石の連脈は赤石の連脈のように、八ヶ岳の一族は八ヶ岳の一族のように、富士は問題の外であるが、越中の立山は立山のように、加賀の白山は加賀の白山のように――展望において、やや縦覧を惜しまれている東南部、針木、夜立、鹿島槍、大黒の山々、峠でさえも、東北の方、戸隠、妙高、黒姫等の諸山までも、おのおのその個性を備えて、呼べば答えんばかりにではない、呼ばないのに、千山轡を並べ、万峰肩を連ねて、盛んなる堂々めぐりをはじめました。

天際と、地軸の間を表に真黒な沈黙、裏に烈々たる火炎を抱いて動き出したそのめざましさに、二人は驚動しました。

「ああ、山という山が、みんな集まって来るではないか」

「山がみんな集まって、何をするのでしょう」

「何をしでかすかわからない」

「あれ、富士山が――大群山が、丹沢山が、蛭ヶ峰が、塔ヶ岳が、相模の大山――あれで山は無くなりますのに――まあ、イヤじゃありませんか、大菩薩峠までが出て来ましたよ」