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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

中里介山『大菩薩峠11』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 页

青空文庫

今や、前にいう通り、青天白日のことであり、勇敢にして、海に慣れた二人の少年は、あの時のお杉のあまっ子ほどには狼狽と、醜態とを現わしませんでした。少なくとも、恐怖と、好奇とを以て、前面に横たわる怪物の正体を見届けようとして、

「何だい、ありゃ」

「鮪取りの善さんじゃねえけえ」

「善さんは、あんなに頭の毛が赤かあねえぞ、それに、もっと面の色が黒えぞ」

「今、へっこんだから、もう一ぺん見てえろ、出て来るところを見てえろ、善さんだか、そうでねえか、見てえろ」

二人は一途にその海の面を見入ります。

それはマドロス氏が、また浮袋を離れて海に没入した瞬間に於て、次の浮揚期間を待つものでしたが、それでも彼等は、怪物とも、化け物とも見ないで――それを村の鮪取りの善さんなるものと比較対照していたが、浮び出でた時は、決して鮪取りの善さんなるものではありません。

それはむしろ、彼等もその通りに期待していたのですが、再び現われた瞬間を見ると、鮪取りの善さんなるものとは、あまりに相違の甚だしかったものですから、二人はあっと仰天し、

「善さんじゃねえ、善さんじゃねえ――大江山のスッテンドウジだ」