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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

中里介山『大菩薩峠11』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 页

青空文庫

形勢を逆に観察してみると、最も興味のありそうな場面が、幕末と、明治初頭に於て、二つはあります。

その一つは、右の時、小栗をして志を得せしめてみたら、日本は、どうなるということ。

もう一つは、丁丑西南の乱に、西郷隆盛をして成功せしめたら、現時の日本はどうなっているかということ。

この答案は、通俗の予想とは、ほとんど反対な現象として現われて来たかも知れない。

右の時、小栗を成功せしめても、世は再び徳川幕府の全盛となりはしない。

もうあの時は徳川の大政奉還は出来ていたし、小栗の頭は、とうに郡県制施行にきまっていたし、よしまた、ドレほど小栗が成功したからとて、彼は勢いに乗じて、袁世凱を気取るような無茶な野心家ではない、郡県の制や、泰西文物の輸入や、世界大勢順応は、むしろ素直に進んでいたかも知れない。

これに反して、明治十年の時に西郷をして成功せしむれば、必ず西郷幕府が出来る。

西郷自身にその意志が無いとしても、その時の形勢は、明治維新を、僅かに建武中興の程度に止めてしまい、西郷隆盛を、足利尊氏の役にまで祭り上げずにはおかなかったであろう。

西郷は自身、尊氏にはならないまでも、尊氏に祭り上げられるだけの器度(?)はあった。