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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

中里介山『大菩薩峠11』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 页

青空文庫

でも、今日は二人とも感心に、止まるところを知っているらしい。

汐見の松のところまで来ると、兵部の娘は、松の根によりかかってしまうと、茂太郎は、少し離れた石の上に腰をかけて、松の枝の間、兵部の娘の振袖の垂れ下っているところから黒船を見ている。

そこで勢い、即興の出鱈目が一首、なければならないことになる。

昔より今に渡り来たる黒船

縁がつくれば鱶の餌となる

ハライソ、ハライソ

サンタ、マリヤ

兵部の娘は、松の木から海を背にしているのですから、黒船を見ることができません。

小春日和に、散歩気分の充実した面を汗ばませて、軽い疲れを休ませながら、

「茂ちゃん、踊ってごらんな」

と言いました。

「踊りましょうか」

「踊ってごらんな、誰も見る人はないから」

「そんなら踊りましょう」

「その砂の上で、少ししめりのあるところがいいでしょう、はだしにおなりなさい、足あとが砂の上につくから。やわらかでいいでしょう」

「ええ、乾いた砂の上より、こっちの湿ったところの方が踊りいいね」

「さあ、誰も見ていないから、思いきって踊ってごらん」

「ええ」

茂太郎は誰も見ないところで、思いきって踊ることの自由を与えられたことに、至極の満足らしく意気ごんで、左の肩をぬぎました。