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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

中里介山『大菩薩峠16』。同一底本的分册已合并为一书。收入:大菩薩峠、大菩薩峠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 页

青空文庫

「ホ、ホ、ホ、ホ」

と笑いました。相手が別嬪だから、後へ引くようでは年甲斐もない――というのは、やっぱり理窟に合わないところがあるのです。それをお雪ちゃんが少し笑ったのでしょう。そういうふうにお雪ちゃんの調子がいいものですから、道庵もいよいよ附け上って、

「そこで、一通りそのお嬢さんの脈を診て上げて帰りに、先生一杯なんて、よけいなことをその家の両親共がすすめるもんだから、ついいい気持になっちまって、それから牛込の改代町まで来ると、出逢頭に子供を一人、蹴飛ばしちまったんだね。ところが、その子供の親父が怒ること、怒ること、むきになって怒るから、こっちも相手が悪いと思って、平あやまりにあやまったが、先方がどうしてもきかねえ。わしも困っていると、いいあんばいに仲裁が出ました。その仲裁人が、子供の親父をなだめて言うことには、お父さん、足で蹴られたぐらいは辛抱しな、この人の手にかかってみたがよい、生きた者は一人もない――だってさ。そこでおやじも、おぞけをふるって逃げて行った姿がおかしかったよ」

「ホ、ホ、ホ、ホ」

お雪ちゃんがまた笑いこけました。しかし、これもお雪ちゃんとしては、笑いこけるほどの新し味があったかも知れないが、実は古いものなので、安永版の初登りあたりにあるのを、道庵が、単にお雪ちゃんを一時喜ばしたいがために